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絵本作家 市居みかの日々あれこれ ichiipk.exblog.jp

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by ichiipk

生きられなかった人生


絵本の絵を描きつつ、小説の朗読テープを図書館から手当り次第に借りて聞いています。
しばらく聞いていたのは、立松和平さんの「日高」。
北海道の雪山で遭難した大学生の話なのですが、なかなか哀切で。。。

大学の山岳部のパーティーが雪山に縦走に出かけます。主人公はリーダーの男子学生。
4年生で、就職も決まっていて、最後の山行き。
彼はそのメンバーにいる後輩の女子学生へ恋心を抱いています。
予想以上の大雪で、雪洞を掘って中で寝るのですが、雪崩が起き、全員生き埋めになってしまいます。
リーダーも目を覚ますと、かちかちに凍った雪に閉じ込められており。
なんとか脱出しようと雪を効かない手で掘ったりもするのですが。。。

彼がその中で亡くなるまでの4日間の話なのですが、その雪の中で、彼の妄想というか夢がどんどん描かれていくのです。
その妄想の中で、彼はその女子学生と夏の山へいったり、就職をしたり、結婚をしたり、そして、子どもの出産に立ち会ったり・・・・その彼の「生きられなかった人生」が、現実かと思うくらい、事細かに語られます。
そして、時々、雪に閉じ込められた現実の世界へ戻ってきて、また苦しみ。。。

なんだかきっとこんなことがあるのでは・・・と思いました。
まだ若く、これから、という時に人生を断たれてしまう、その哀しみと、でも、一瞬の妄想でもこんなに生きることもできるんじゃないか、とも思えてしまいました。

私も学生の頃、山登りをしていたので、いろいろよくわかるところもありました。
そして、山岳部の同級生が、同じように雪洞が崩れて亡くなったという事件もあったので、よけいにこの話が身にしみました。

・・と、こんな話を聞きながら、南国のワニの絵を描いていた私です。
by ichiipk | 2010-01-23 17:56 | 日々の暮らし